Journalists on duty / Yan Arief


【産経新聞】近所の22歳男を殺人容疑で逮捕 「やっていません」と否認

 和歌山県紀の川市の市立名手(なて)小5年、森田都史(もりた・とし)君(11)が刺殺された事件で、県警岩出署捜査本部は7日未明、紀の川市後田、無職、中村桜洲(なかむら・おうしゅう)容疑者(22)を殺人の疑いで逮捕した。調べに対し、中村容疑者は「やっていない」と容疑を否認しているという。
 中村容疑者の自宅は、殺害現場の空き地から北西に約70メートル、森田君の自宅からも約110メートルしか離れていなかった。
 事件は5日午後4時20分ごろ発生した。和歌山県紀の川市後田(しれだ)の空き地で、森田君があおむけで血を流して倒れているのが見つかった。
http://www.sankei.com/affairs/news/150207/afr1502070007-n1.html 
和歌山県の小学5年生が刃物で複数回刺されて殺害された事件

近所に住む容疑者が逮捕されひと段落といった感じですが、おそらく新聞社を初めとするマスコミのみなさまはまだまだ報道合戦を繰り返していくのでしょう。

そこで新聞社が殺人事件容疑者の逮捕後に争点としていく、一般的にはそこまで興味ない「抜きあい」を予想します
和歌山事件や新聞マニア的一般論などを交えて書いてきます


【1.容疑者の顔写真】

実は今回はもうすでに護送されている中村容疑者の写真がとられているのですが。。。

まー別の様子がかいまみられる写真もマスコミは報道することを狙ってきます

殺人事件などマスコミが大きく扱うような事件では、マスコミは容疑者、被害者など事件に関わってくる人の顔写真の入手に走ります。今回のようにうまく撮影できない場合などは。
そしてマスコミによって顔写真の入手に成功したり失敗したりします。
それをどう見分けるかというと、単純に新聞やニュースに載っているか否か。
「読売新聞に顔写真は載っているけど朝日新聞には載っていない」とかありますけど、それは報道機関がバイアスをかけあえて掲載していないのではなく、単純に入手まで至ってないからです。勿論、中にはバイアスをかけている場合もあるかもしれませんが

例えば尼崎連続変死の主犯とされた故・角田美代子氏。
事件が発覚して1週間くらいたっても顔写真は世に現れず、インターネットでは「角田美代子が在日だからマスコミが隠している」といった憶測がうまれました。
しかしこれも結局、顔写真入手にマスコミ各社がてこずったからです。
それに焦ったのかマスコミが別人の顔写真を角田美代子氏の写真として流してしまい、人権侵害問題という別の事件に発展しました。たしか間違った顔写真を一番最初に流したのは日テレだった気がする・・・

それにしても角田氏の在日問題。犯罪者を無理やり在日認定するのはネットのよくないことですが、関係者にハングル名の方もいたので、角田美代子が本当は在日なのか新聞や文献などを読み調べました。
しかし、角田美代子氏が在日であるなんていう情報はどこにもなかったです。内縁の夫や、可愛がっていた子分などに在日がいたみたいですが

顔写真の入手状況はある意味、どこが一番取材が進展しているかというのがわかるです。
ただ個人情報だなんだうるさい世の中で顔写真なんて普通提供したくないけどね・・・


【2.容疑者の供述】

これも新聞では顔写真なみに重要視しています。

因みに現段階で、逮捕された中村桜州容疑者は「やっていない」と供述しています。
つまり否認しています。

勿論警察による誤認逮捕という可能性もありますが、中村容疑者が嘘をついている可能性もあります。

そこでマスコミは中村容疑者の供述の変遷をウォッチします。

例えば否認から一転、認める供述を始めれば新聞は大きく扱うでしょう。それが警察の発表ではなく「捜査関係者」からこっそり教えてもらった話なのであればなおさら見出しが大きくなります。

更にそこから動機に関する供述をマスコミは取材していきます。
あくまでも私の想像の話しですが「声をかけられたら無視された」「いたずらしようとしたら無視された」とかそんなことを言いだしたらそれもニュースになっていくでしょう

あとは犯人しか知りえない「秘密の暴露」。これも警察から聞きだしたらマスコミは大きく扱うでしょう

秘密の暴露とは

「被害者の体をバラバラにして腕は●●、足は▲▲に捨てた」
「犯人を殺したナイフは■■に放り投げた」

など。

容疑者が犯人だと認定する際、重要な証拠になってくる供述です。


【3.容疑者の責任能力】
刑事責任能力とは容疑者が事件当時ちゃんと自分を制御できる状態だったかどうか、という能力です
精神が崩壊していて、自我を失い、わけがわからない状態で殺したら、刑事責任能力なしで釈放されるかもしれません。

報道によれば、中村容疑者の奇行が逮捕前に目撃されています。
近所で木刀やなたを振り回したり

そこからみると、中村容疑者に刑事責任能力があるのか疑われます。
少しでも刑事責任能力に疑いがある場合は鑑定留置という措置がとられます。

鑑定留置とは容疑者が精神障害などで刑事責任能力を問えない可能性がある場合に、心身・身体を調べる「鑑定」ため、一定期間を病院などの施設で身柄を拘束することです。

鑑定の結果、もし責任能力がないと診断されたら「心神喪失」と認められると「不起訴」になり捜査は終了です。もし限定的な責任能力があるとしたら「心神耗弱」となり刑が軽減されます。

そういったこともあり、逮捕段階で明らかに精神がいっちゃってる場合は警察がマスコミに対して容疑者の名前を発表しない場合あります。

あくまでも捜査する必要があるので身柄を拘束するが、不起訴になる可能性が高いときや、
無用に精神障害者による犯行と発表し、精神障害者に対する差別を助長する可能性が高いときなど。

ただ社会的反響が大きい今回のような殺人事件では例外だと思います。


【4.起訴するかどうか】

日本では裁判所に起訴された容疑者の99%は有罪となります
逮捕されただけでは、検察が不起訴処分にして、捜査が終了する可能性があります
しかし起訴されたら「ほぼ」有罪といえます

和歌山の小5児童殺害事件では上でも書いた通り容疑者の責任能力に疑問が残りますが、もし起訴されたら何らかの刑罰を受ける可能性が高いです。

つまりマスコミは検察が容疑者を起訴するのかどうか、というのを他社よりも早く報道しようとします。
これも「捜査関係者」から聞いたと書かれるのが多いですね。

というのも、容疑者が真犯人である可能性がこれでぐっと高まり、事件の一区切りとみなしていると思われます。


【5.裁判のフォロー】

あとは刑事裁判の手続きにそってマスコミもフォローします。
初公判は注目されます。何故なら逮捕されたあとに容疑者がはじめて公の場所に出てくるからです

今までは周辺関係者の話しなどから犯人の身なりや様子を記事にしていきますが、この時ほぼはじめて容疑者を生で見た記者が様子を書きます。

その後証拠調べ→証人尋問→検察の論告求刑(「●●被告は懲役●年が相当である」という検察のアピール。これはあくまでも検察主張であって判決ではありません。)→判決という流れになってきます

判決が出てはじめて殺人犯が殺人犯と認定されます。ただ不服であれば高裁に控訴、控訴審でも不満であれば最高裁に上告できるので、その場合は最終的には最高裁の判決をもっと真犯人と認定されます。


【6.事件の社会性】
こういった殺人事件の多くは新聞では社会面に掲載されます。
っというのも、新聞はこういった事件からむりくり「社会性」をみいだします
つまり、この事件は今の世の中のどういったことを表しているのか、と

例えば2014年に横浜市であったベビシッター事件
インターネットを介した個人シッターに預けた子供が虐待され殺されたという痛ましいできごと
この事件の裏には色々なキーワードがあると思います。
待機児童、ネットビジネスの恐さ、ワーキングプア、女性の両立など

そこを検証した上で「二度とこういった事件を起こさないように」と今の社会の問題を新聞で報道していきます

今回の和歌山県の小5殺人事件で重要になってくるのが、容疑者の生い立ちや人柄だと思います
何が彼をそうさせたのか、両親の愛を受けて育ったのか、

場合によっては被害者との関係に何か社会性が隠れているかもしれません
例えば小児性愛など

あくまでも全て想像ですがね・・・

 

7.っということで
容疑者が逮捕されて世間での注目度は薄れても、これからも新聞紙面には事件をみることはあるでしょう
ただ日がたつにつれ新聞での扱いはドンドン小さくなり、
また違う殺人事件が起きれば、さらに小さくなり
最終的な判決は本当に小さな「ベタ記事」になってしまう可能性もあります

ちなみにこういった事件報道。
圧倒的に読売新聞が強い
最近は右寄りの主張でブイブイ言わせている産経新聞なんてめったに抜かない
読売に次になると、毎日、朝日がどっこいどっこいといった感じでしょうか