
Schmiergeld / dierk schaefer
19日朝刊の社説で朝日と産経がシンクロしました。
西川農水相に対する批判で、両社は「返金するならそもそも受け取るな」と同じ主張を載せました。
水と油の両社ですが、今回ばかりはタッグマッチした感じですね。
【朝日と産経、夢のコラボ 西川農水相批判を社説でシンクロ 水と油がまざりあう】の続きを読む
◆時代錯誤の狂言集団・・・そもそもISはそんなヨルダンの事情を承知で交換解放という「くせ球」を投げた可能性もある。親日・親米のヨルダンはISと戦う有志国連合の一員である。ヨルダンを揺さぶって有志国連合にくさびを打ち込み、あわよくばヨルダンを脱退させることもISは狙っていたようだ。・・・ネットを通じて巧妙な広報活動を展開し、欧米主導の歴史と国際秩序に挑戦するようなイメージを強調して、世界各地の若者らを吸い寄せようとする。だが、実態を見れば、異教徒を容赦なく殺害し、女性は性奴隷として売り飛ばし、見境なく人質を取って身代金を奪う狂信的な集団に他ならない。世界16億人のイスラム社会の中で、悪性細胞のような存在だろう。
◆政府対応の検証が必要・・・この事件には不明な点が多い。政府は情報公開に努め、国会は政府対応も含めて事件の徹底した検証をすべきである。後藤さんの家族には昨年から身代金要求があり、これを政府も承知していた。にもかかわらず安倍首相が中東を歴訪し、ISと戦う国々に経済支援を表明した狙いは何だったのか。政府はヨルダンに頼るほか、救出へどんな方策を試みたのかなど、再発防止に向けた議論を尽くさなければならない。
◆責任追及と処罰を・・・国連の調査委員会が昨年まとめた報告書は、「イスラム国」による思想統制や女性への組織的な性暴力などの残酷な統治の実態を指摘し、戦争犯罪や人道に対する罪で司令官らを国際刑事裁判所(ICC)で訴追するよう促している。たやすいことではないだろう。それでも2人の日本人のほか、人質となった米国人、英国人が殺害された事件も含め、訴追と処罰を求める国際社会の圧力を高めていくべきだ。
◆政府の対応、検証を安倍首相らの国会などでの説明によると、湯川さんの拘束事件を受けて昨年8月に首相官邸に情報連絡室などを設置。11月には後藤さんの行方不明を把握し、政府が対応する事案に加えたという。・・・今回の日本政府の対応について、菅官房長官はきのうの会見で「(「イスラム国」とは)接触しなかった」と述べた。それはなぜなのか。昨年、新設された政府の国家安全保障局は、どのように機能したか。同じ被害を繰り返さないためにも、政府は事実を最大限公表し、検証する責任がある。
◆互いを知り合う必要
・・・周辺の国々にはシリア、イラクから逃げる人たちがあふれ、欧州各国も含め、難民受け入れの負担が増している。今こそ日本政府が難民に門戸を広く開くときではないか。ほとんどのイスラム教徒は穏健で命を大切にする人たちだ。互いをもっと知り合う。そして必要な助けの手をさしのべる。悲劇を乗り越え、その原則を貫きたい。
◆覚悟を持つ社会の醸成を・・・後藤さんと湯川さんが拘束された映像が流れたのは1月20日だった。ナイフを手にした男は身代金として2億ドル(約236億円)を日本政府に要求した。安倍首相が中東歴訪中に表明した、避難民に対する人道支援の額と同額である。金額の多寡に関係なく、これを受け入れるわけにはいかなかった。テロに屈すれば新たなテロを誘発する。身代金は次なるテロの資金となり、日本が脅迫に応じる国であると周知されれば日本人は必ずまた誘拐の標的になる。音声は日本政府を批判し、日本国民には政府に圧力をかけるよう要求した。これに呼応する形で国内の野党や一部メディアから同様の批判の声が相次いだが、日本の国民は冷静だった。
◆日本として責任果たせ・・・安倍首相は改めて「日本がテロに屈することは決してない」と述べ、中東への人道支援をさらに拡充することを表明した。今後もイスラム諸国を含むテロと戦う国際社会と連携し、日本としての責任を果たさなくてはならない。
◆国際社会の結束不可欠・・・そもそも国際ルールを無視し、虐殺、略奪、誘拐、占拠など、凶悪で非道な犯罪行為を重ねてきたのは、イスラム国である。イスラム国を封じ込めるには、国際社会の結束が欠かせない。米国主導の有志連合には約60か国が参加している。国連安全保障理事会も邦人人質事件に関し、イスラム国への非難声明を発表した。
◆自己責任にとどまらず・・・ジャーナリストの後藤さんは昨年10月、退避勧告が出ていたシリアにあえて入国した後、 「何か起こっても責任は私自身にある」とのメッセージを残していた。「自己責任」に言及したものだが、結果的に、日本政府だけでなく、ヨルダン政府など多くの関係者を巻き込み、本人一人の責任では済まない事態を招いたのは否定できない。同様の事態を避けるため、今後、危険地域への渡航には従来以上に慎重な判断が求められる。今回の事件により、日本人が海外で誘拐の標的となる危険が一層高まったことにも留意したい。
◆邦人救出の議論も要る首相は、海外での邦人救出に自衛隊を活用するための法整備を検討する方針である。領域国による自衛隊受け入れの同意など、様々なハードルもあろう。政府・与党で議論を深めることが大切だ。
次に社説ではなくて新聞記者個人の意見です。◆後藤さんの志を踏みにじる卑劣な犯行・・・後藤さんは弱者の目線に立ち、紛争地で苦しむ女性や子供の姿を世界に伝えてきた。ヨルダンを巻き込み、後藤さんの命を取引に使ったイスラム国は卑怯(ひきょう)としか言いようがない。・・・政府は後藤さんらの拘束情報を受けて昨年、非公表で対策本部を設置したという。事件は首相の中東訪問のタイミングが狙われた。どこまで状況を把握していたのか。解放に向けた交渉のルートは確保できていたのか。虚を突かれる前に点検すべきことがあったように思える。日本人がテロに遭う事態は今後も起こりうる。未然に防ぐ情報の収集と、国民が危険を回避するための適切な開示が欠かせない。
◆変わるテロどう対峙産経新聞 論絶副委員長 村上大介
・・・ISは対米憎悪を根に持つ狂信的暴力集団だ。それに世界の過激な若者が引き付けられている異常な状態を憂慮せねばならない。米国主導だった国際秩序を今後いかに維持するかは、世界の課題でもある。
パリの街中でもテロは起きた。ISに感化された組織はアジアにも広がっている。世界を不穏な空気が覆う。変わるテロと過激主義。日本と世界が対峙する相手に、過去の経験則は通用しない。そこに今回の事件の真の恐ろしさがある。
◆過激思想の拡散 付きつけた脅威
後藤健二さんらの解放を願う世界の多くのイスラム教徒が連帯の声を上げた。イスラム国にとって誤算だっただろう。この残虐非道な事件でただひとつ救いの点があったとすればこの点だ。
【朝日新聞】社説:国会と「70年」―大いに論じよ歴史認識
第3次安倍内閣が発足してから初の本格論戦の舞台となる通常国会が、きのう開会した。
成長戦略や安全保障関連など、重要法案が目白押しの国会なのに、安倍首相の演説は来月まで先送りされた。肩すかし感は否めない。
ところが開会前日に、首相から聞き流すことができない発言が出てきた。戦後70年の「安倍談話」についてである。
首相はこのところ、戦後50年の「村山談話」や60年の「小泉談話」を「全体として受け継いでいく」と繰り返している。
その村山談話の根幹は「植民地支配と侵略によって、アジア諸国の人々に多大の損害と苦痛を与えた」と率直に認め、「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明している点にある。
首相はおとといのNHK番組で、司会者から「植民地支配や侵略という文言を引き継ぐか」と問われ、こう答えた。
「いままで重ねてきた文言を使うかどうかでなく、安倍政権としてこの70年をどう考えているかという観点から出したい」 「今までのスタイルを下敷きとして書くことになれば、『使った言葉を使わなかった』『新しい言葉が入った』というこまごまとした議論になっていく」
驚くべき発言だ。
植民地支配や侵略というかつての日本の行為を明確に認めなければ、村山談話を全体として受け継いだことにはならない。同じ番組で公明党の山口代表が「(談話の継承が)近隣諸国や国際社会にちゃんと伝わる表現でないと意味がない」と語った通りだ。
こうした表現をめぐる議論を、「こまごまとしたこと」と片づけるわけにはいかない。安倍談話の内容は、中国や韓国だけでなく、東アジアの安定を求める欧米諸国も注目しているからだ。
最近は封印しているが、安倍氏は村山談話の見直しに意欲を示していた。だが、村山談話はその後のすべての首相が継承し、国際社会でも高い評価が定着している日本外交の基礎である。いかに国会で圧倒的多数を占める政権とて、これをあっさりと覆すことはできない。
「未来志向」の談話にしたいという思いはわかるにせよ、首相の発言を聞くにつけ、内外からの批判をかわしつつ、村山談話を骨抜きにするための狭き道筋をひたすら探っているように思えてならない。
談話そのものは国会で審議するものではない。だが、背景にある首相の歴史認識について、国会は大いに論じるべきだ。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#20150127
【毎日新聞】社説:戦後70年談話 賢明な判断を求めたい
安倍晋三首相は8月にも出す戦後70年談話について、戦後50年の村山富市首相談話と戦後60年の小泉純一郎首相談話がともに用いた「植民地支配と侵略」「痛切な反省」「心からのお詫(わ)び」などのキーワード継承に否定的な考えを示した。
村山談話は日本の姿勢を説明する際の外交資産になってきたのではないか。キーワード抜きの談話は国際社会との関係を損ないかねない。
首相は「今まで重ねてきた文言を使うかどうかではなく、安倍内閣としてどう考えているかという観点から出したい」と語った。先の大戦に対する痛切な反省と同時に、戦後は自由と民主主義を守り、世界に貢献してきたことにふれ、未来に対する意志を書き込む意向も強調した。
戦後も70年を数え、各国とも世代交代が進んでいる。この間の平和国家としての歩みが十分理解されているとは言い難い。談話に戦後の総括や未来への展望を織り込むことに、異論はない。その際、過去の反省を前提にしても矛盾はないはずだ。
村山談話の背景には、歴史認識をめぐってさまざまな意見があることや、戦後処理の多くが未解決のまま残されてきたという問題がある。
談話が閣議決定されると、その後の歴代内閣はそろってこれを踏襲してきた。小渕恵三内閣は1998年の日韓共同宣言と日中共同宣言で、談話を引用した。小泉内閣は2005年の談話で、政府開発援助(ODA)や国連平和維持活動(PKO)などを通じての世界平和と繁栄への貢献に言及しつつ、「戦後の歴史は、まさに戦争への反省を行動で示した平和の60年」と踏み込んだ。
村山談話は日本政府の公式見解になり、21世紀のアジア外交を支えてきたと言える。
いま政治指導者に求められるのは談話踏襲の流れを踏まえつつ、国民全体の歴史認識についてのコンセンサスづくりを促すことだろう。植民地支配や侵略といった文言が、「こまごまとした」問題でないのは言うまでもあるまい。
安倍首相の発言に、野党などから批判の声が上がった。「過去の反省が飛んでは、戦後70年の歩みを否定することになりかねない」(岡田克也民主党代表)、「キーワードを継承せずに変えると誤ったメッセージを与える」(江田憲司維新の党代表)といった懸念を私たちも共有する。
談話作成にあたり、首相は有識者会議の議論を踏まえる意向を示している。新談話は首相個人のものではないし、村山談話の真意を伝えながら戦後70年にふさわしいメッセージを出すことはできるはずだ。そのためにはどんな文言が適切か、首相の賢明な判断を求めたい。
http://mainichi.jp/opinion/news/20150127k0000m070133000c.html
【朝日新聞】数研出版の高校教科書、「従軍慰安婦」「強制連行」削除
教科書会社の「数研出版」(東京都)は、現在高校で使われている公民科の「現代社会」と「政治・経済」の教科書計3点から、「従軍慰安婦」と「強制連行」の言葉を削除する。昨年11月に記述の訂正を文部科学省に申請し、12月に認められた。4月から使用される教科書に反映される。
記述を訂正した教科書は「現代社会」2点と「政治・経済」1点で、計4カ所の記述。「誤記」を理由に、文科省に訂正申請があった。
現代社会は、「強制連行された人々や『従軍慰安婦』らによる訴訟が続いている」とあった記述を、「国や企業に対して謝罪の要求や補償を求める訴訟が起こされた」などと訂正した。
政治・経済の教科書では、「戦時中の日本への強制連行や『従軍慰安婦』などに対するつぐないなど、個人に対するさまざまな戦後補償問題も議論されている」との記述を、「韓国については、戦時中に日本から被害を受けた個人が、謝罪を要求したり補償を求める裁判を起こしたりしている(戦後補償問題)」と訂正した。
社説 「慰安婦」記述 事実をなぜ削るのか
・・・文科省は検定後に教科書会社が記述を訂正しなければならない場合の理由として、「誤記」「誤植」や「客観的事情の変更に伴い明白に誤りとなった事実の記載」を規則に挙げている。
「従軍慰安婦」の表現が適切かどうかという議論はあるが、軍の関与の下で慰安所が作られたことは事実だ。安倍首相も国会で慰安婦について「筆舌に尽くし難いつらい思いをされた方々」と答弁している。それがなぜ「誤記」なのか。
・・・朝日新聞は、慰安婦にするため女性を暴力的に無理やり連れ出したとする故吉田清治氏の証言記事を取り消した。同会はそれを挙げ「『従軍慰安婦』は問題として消滅した」と主張する。だがそういった極端な主張は、日本が人権を軽視しているという国際社会の見方を生む。